最近はクリスタを使ったイラストの塗り方をkritaで再現しながら、キャラクターの塗り方を学んでいます。参考にしている本は「プロ絵師の技を完全マスター キャラ塗り上達術 決定版」です。この本で私が最初に参考にした絵師さんは、イラストに立体感やリアルさを出すコツとして、クリスタに付属している3Dデッサン人形 を活用していました。光源やポーズを自由に変えられる3Dデッサン人形は、今は使ってる人も多そうですね。
私は人物を描くときは適当に手持ちのフィギュアを参考にしたり、実際にモノがあるときは実物のものを見ながら描いているのですが、いちいち出したりするのが結構手間なのですよね。3Dのツールだと、デッサンモデルを前のセッティングと同じ状態に素早く再現できるのが楽なので使いたくなりました。場所も取らないので本当に良いですよね。
kritaには3Dデッサン人形を表示する機能はないので、別のアプリで3Dデッサン人形の購入を検討していましたが、なんと、blender という3Dソフト で表示したデッサン人形をkrita で表示できるようにするプラグインを作った猛者が現れました🔥やばい、凄すぎる…!このプラグインはkritaのコミュニティでもかなりの評判で、kritaの標準機能として取り込むことも検討されているようです。楽しみですね。3Dデッサン人形の専用アプリよりも、blenderの方が自由度が高そうですし、何より面白そう。早速このプラグインを試してみました。
というわけで、今回はkritaとblenderを連携させて3Dデッサン人形を使ってイラストを描く方法を紹介したいと思います。まずは、必要なソフトウェアを確認しましょう。次の節からそれぞれ順番にインストールしていきたいと思います。
- blender: 無料でオープンソースの3Dモデリング・アニメーションソフトウェアです。映画やゲームなどに使われています。
- BlenderLayer: kritaとblenderを連携させるプラグインです。blenderで表示した3Dモデルをkritaのキャンバスに投影して描くことができます。
Blenderのインストール
私はLinuxを使っているのでLinux(Fedora)でのインストール方法を説明しています。WindowsやMacの方は自分のOSに合った方法でインストールして下さい。この後で入れるBlenderLayerプラグインはどのOSでも同じ方法で入れられます。
blenderをインストールします。Blenderの公式サイトへ行き、「Download Blender 4.0.2」をクリックします。Donate to Blenderの画面が出てきますが、そのまま待っていればダウンロードされます。
ダウンロードしたファイルを自分で任意に作ったアプリ置き場に解凍します。
[fukari@fedora App]$ tar -Jxvf blender-4.0.2-linux-x64.tar.xz
解凍して出来たフォルダの中にblender.desktopというファイルがあります。これを~/.local/share/applications/へコピーしました。
[fukari@fedora blender-4.0.2-linux-x64]$ mv blender.desktop ~/.local/share/applications/
コピーしたblender.desktopを開いて、Exec=blenderと書かれている行を探します。ここをblenderの実行ファイルのパスに書き換えて保存します。
Exec=/home/fukari/App/blender-4.0.2-linux-x64/blender %f
fedoraのメニューを見てみるとblenderが追加されているので起動してみます
起動できました
プラグインのインポート
以下のurlから今回入れるプラグインのgithubのレポジトリに行きます
「Code」のボタンをクリックしてzipをダウンロードします
起動したkritaで、上部のメニューから 「ツール>スクリプト>Pythonプラグインをファイルからインポート」 と選択します
ファイルを選択するウィンドウが開くのでダウンロードしたzipを選択してokを押します
プラグインを有効にするか聞かれるので「はい」を選択します
kritaを再起動します
プラグインを起動する
kritaを再起動すると、新しいBlender Layerというドッカーが表示されています
※ 表示されていない場合は上部メニューの 設定>ドッキングパネル からBlender Layerを選択します
私の場合はちょっと変な場所にドッカーがあったので分かりやすい位置に移動させました
kritaで新しいドキュメントを作成します
ドキュメントを作成すると、Blender Layerドッカーの機能を利用できるようになります。「Start Blender」というボタンを押してkritaからBlenderを起動してみます。
ボタンを押すと、上の画像のような状態になります。(起動時に表示されるQuick Setupは適当にいなします)Blenderが起動されると、立方体の3Dモデルが表示されました。これはどうやらBlenderを立ち上げたときにデフォルトで表示されるモデルのようです。kritaにもBlender側で表示されているものと同じ立方体の3Dモデルが表示されました。krita側ではブレンダー側で描画している3Dモデルを表示できる「Blender Layer」という名前のレイヤーが作られて、それにBlender側の描画が映し出されている形になります。この上に新しいレイヤーを作ったりして、3Dモデルを参考に絵を描くことができます。
デッサン用の3Dモデルを表示する
krita側で「Blender Layerドッカー」をスクロールした先にある、一番下の項目「Add to scene」にあるドロップダウンメニューからbody-cyanを選びます。このドロップダウンメニューではプラグインに初めから同包されているモデルがいくつか選べるようになっています。
横にある「+」のボタンを押すと、立方体に重なってデッサン用の3Dモデルが追加されます
もともと表示されていた立方体を消します。blender側の右上あたりにあるアウトライナー・エディターというペインに「Cube」があるのでこれを右クリックして削除を選択します。立方体を選択して右クリックしたメニューから削除でも大丈夫です。
※ モデルを表示する前に立方体を消すとうまく動かなくなるので、先にデッサンモデルを表示させます
視点を動かす
Blender Layerのドッカーパネルから、視点を動かして3Dモデルの見え方を調整します。Blender側から視点を操作してもkrita側にきちんと反映されます。
① ドラッグしたまま上下に動かすと拡大縮小する
② ドラッグしたまま上下左右に動かすと視点を上下左右に動かす
③ 透視投影か並行投影かを切り替える
写真と同じ原理で、私達は投影面に写った3Dのモデルを見ています。
- モデルの遠近感が表現される
- モデルの位置に関係なく全て同じ大きさになるので遠近感は表現できないが、形の正確性を得られる
ざっくり透視投影
ざっくり並行投影
詳細は参考文献にも挙げたこちらがおすすめ。学生のときに使っていた教科書です📕
リンク
④ ドラッグした方向にモデルを中心にして視点を旋回する
Roll:視点を回転する
Focal Length:焦点距離。距離が短いと遠近感が強く表現される。
Adjust zoom to focal length:焦点距離を変更しても常に同じぐらいの大きさでモデルを描画する機能
viewport shading:
作業用の簡易的なシェーディングで表示する
実際のシェーディングで表示する
show gizmos:Blenderのギズモとは、直感的に操作できる補助コントローラーみたいなものを意味するようだ。krita側ではそれらを表示するだけで特に操作はできない。多分、地面とか光源の位置とかを把握するために表示できるようにしてある。
メモ
とりあえず3Dモデルは表示できるようになりました。今度はポーズを付けられるようになりたいですね。Blenderでちょっと触っただけだとビクともしませんでした😅なんて難しいんでしょうw
このプラグインを導入する前に色んな3Dデッサン人形のアプリを触ってみていたのですが、操作自体は簡単なのに思ったようにポーズを付けるのは結構大変で時間がかかることが分かりました。今度はアプリのように単純化されているものではないので、もしかしたらそれよりずっと大変かもしれないですね。でもまあ、単純にBlenderが使えると面白そうなのでこれをキッカケに勉強してみたいとも思いました。
3Dデッサン人形は、あまり頼りすぎずに参考程度に使っていけたらいいかなと思います。慣れていないせいもあるかと思いますが、あまり参考にしすぎるとなんかちょっとチグハグな感じになってしまいます。練習してたら上手い具合にイラストに落とし込めるんでしょうか…🙄
web漫画とかtwitterとかで見るキャラクターの絵で、たまに違和感を感じるんですがそれと同じものな気がします。なんだろう、物体の在り方としては正しいけど人体としては違うかなという感じ?言葉にするのが下手なのでうまく表現できないのですが、そういうことにならないように注意したいです。どこまでモデルを参考にするのかはよく考えたほうが良さそうです。
参考
コンピュータグラフィックス【改定新版】 CG-ARTS 2015